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認知行動療法 ”認知療法と行動療法”

認知行動療法

 当院では、認知行動療法を取り入れたカウンセリングを実施しています。

 

認知行動療法とは

現在生じている困りごとに対して、考え方や行動の幅を広げることによって、困りごとへの考え方(認知)に変化を起こし、問題解決をしていく方法です。

 

認知行動療法では、あるストレス場面を取り上げ、その出来事が起きた時の考え・感情・身体反応・行動にという要素に注目します。

 

たとえば、小さいころに犬に激しく吠えられて以来、犬を見るだけで恐怖を感じる人が、道端で犬を見かけた場面を想像してください。

その際の先ほどの4つの要素について考えてみましょう。

 

考え:また吠えられたらどうしよう…

感情:怖い、不安

身体反応:心臓がどきどきする

行動:避けて通る、引き返す

 

ストレスに接したときにおこるこれらの反応を「ストレス反応」と呼びます。ストレス自体は、生活する上でなくせないものであり、場合によっては成長のきっかけにもなったりしますが、ストレスが多すぎると、心身が常にストレス反応を起こしてしまうため、日常生活に支障がでてしまいます。

 

認知行動療法では、主に考えと行動にアプローチして治療を進めていきます。

ストレスの原因(上記の例の場合だと犬)をなくすことは難しくても、自分自身の考え方と行動を少しずつ変容させていくことによって、ストレスを減らし、うまくつきあっていくことができるようになります。そうなれば、日常生活もかなり楽になってくるでしょう。

 

 

認知行動療法は、もとは認知療法と行動療法が発展していく過程でうまれた治療法です。

認知療法とは

認知療法は、主に考えの要素に働きかけます。ある出来事についての凝り固まった考え方を、より柔軟な考え方に変えていき、悩みを解決する手助けをします。

 

凝り固まった考え方とはどのようなものか、代表的な例を紹介します。

 

〔0か100か思考〕

  •  物事を良い悪い、白か黒か、全か無かなど、はっきりと分けてしまう考え方です。日常生活で生じる出来事や人間関係において、完全に良い、完全に悪いといったことはなかなかありません。なにもかもどんな時でも完全な人はいませんし、逆になにもかもどんな時でもダメな人もいません。実際は、0と100の中間を行き来しながら生活をしているのです。ですが、この0か100か思考に陥ってしまうと、「自分はいつでもダメな人間だ、いないほうがいいんだ」と強く思い込んだり、「自分は完璧だ、ほかの人間は全員ダメなやつらだ」と強く確信したりしてしまい、ほかの人の言うことを受け入れづらくなってしまいます。

〔べき思考〕

  •  物事や相手、自分に対して、「こうすべき」「こうあるべき」との考え方が強く、それに合わないものについて否定的にとらえるようになる考え方です。よく言えばまじめ、悪く言えば融通が利かないと見られがちです。世の中には考え方はいくつもありますが、「こうあるべき」というこだわりが自ら生活を窮屈なものにしてしまいます。

〔どう思われるか思考〕

  •  他の人からどう思われているのだろう、どう見られるのだろう、という考え方は、コミュニティの中で生活する人間として誰もが持つものです。この考え方は、相手とうまくやっていきたいという気持ちの表れでもあります。しかし、他人の目にどう映るかばかりを過度に気にすると、心の安定が得られにくくなります。それは、自分の価値を相手基準で測り、相手の言葉や態度を深読みするようになってしまうからです。

このような考えにとらわれすぎると、精神疾患にかかりやすくなるといわれています。世の中にある多様で柔軟な考えを知りながら、自分が心地よく過ごせるための考え方を身に着けていきます。

 

行動療法とは

一方、行動療法は、主に行動の要素に働きかけます。これまでに身につけてきたトラブルやストレスのもととなるような行動のくせを修正しながら治療をする方法です。行動療法の分野でよく知られているのが、「パブロフの犬」と呼ばれる実験です。

犬に食べ物を与える際に必ずベルの音を聞かせることを続けると、やがで犬はベルの音を聞いただけで唾液が出るようになります。このように、ある条件(ベル)のもとで起こる行動(唾液が出る)にアプローチすることが行動療法の基本的な部分となっています。

 

たとえば、電話をするのが怖いと言う方がいるとします。行動療法では、ここで生じている「電話をすると不安が高まる」という行動のパターンに着目します。電話相手にもよる、など細かな条件はあるかもしれませんが、ここではシンプルに考えてみます。このパターンを修正するために、まずは知り合いと対面で会話をしてみる、耳に受話器をあてて対面で話してみる、挨拶だけの電話をする、知り合いと短時間の電話をする…など、少しずつステップアップしながら行動を変化させていくことによって、悩みの解決を図ります。

 

 

認知行動療法は、もともとはうつ病の治療のために考案された方法ですが、現在では、ほかのさまざまな疾患に対しても効果があるといわれています。

また、教育やスポーツなどの場面でも認知行動療法の考え方が取り入れられるようになってきており、認知行動療法はより身近になりつつあります。

 

海外の実験によると、認知行動療法は薬物療法を同じくらいの効果があるという結果が出ています。

 

当院では、再発防止のためにより効果的であるとされる薬物療法と認知行動療法の併用も可能です。認知行動療法に興味がある方は、お電話や診察の際にお気軽にお問合せくだい。

※今回のブログは心理室、臨床・公認心理士の伊藤季代美が担当しています。みなさんのお役に立てると幸いです。よろしくお願いします。

※下記もご参照下さい
https://www.warabi-mental.com/cognitive-behavioral-therapy/

※下記もご参照ください(厚労省:うつ病の認知療法・認知行動療法 患者さんのための資料より)
https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/kokoro/dl/04.pdf