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思春期と発達障害 つまずきのきっかけ  自閉症スペクトラム障害(ASD)編

発達障害

 近年、一般の方も発達障害という疾患について耳に触れる機会が多くなっています。そのため幼少~学童時に受診して診断される方も増えています。その一方で、幼少期や学童期は家庭生活や学校生活では大きな問題なく過ごされている方が思春期に入る頃から部活動、課外活動での共同作業などで様々な問題が発生して生きづらさを感じてメンタル不調を生じるケースもみられます。今回は、学童期までは問題なく日常を生活過ごせた方が思春期に入り人間関係などでつまづき、生きづらさを感じやすくなる経緯を解説をしてきます。

 発達障害の代表的なものには注意欠陥・多動性障害(以下、ADHD)と自閉症スペクトラム症(ASD)があります。今回はASDを取り巻く思春期前後の変化に焦点を当てて解説していきます。

 自閉症スペクトラム症は、3大発達障害の1つに数えられ、かつては自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害などと個別に分類されていました。これらは広くコミュケーションや社会性に関する脳の機能が一般と異なる独得な成長の仕方をするという共通点をもっています。親の育て方など心理的な要因でおこった心の病というわけではありません。 

 症状のあらわれ方も人によって異なり広範にわたることから、一つにまとめてASDと総称されるようになりました。ASDの症状の中核はコミュニケーションの障害で、幼少時から認められ、多くの場合は3歳までに診断が可能です。目と目が合わない、笑いかけてもほほえみ返さない、お友達との”ごっこ遊び”が苦手で仲間の輪に入りにくい、言葉の発達が遅い、語彙が広がらない、こだわりが強いといったものがあります。光や音に敏感であるといった特徴もあります。同年代の集団の中に入っていけないといったことがあり、1歳半検診や3歳児検診で指摘されることがあります。しかし、知的能力の障害(知的障害)を伴わず、言葉の発達が良好である場合には、小学校入学後や、成人になってから初めて診断を受けることもあります。

 ASDの特性がある場合、相手の気持ちだけでなく”自分自身の気持ちを把握するのが難しくなる”とされています。周囲に感情が出ないだけでなく、そもそも自分がどういった気持ちなのかを自分でも感じ取るのが難しいことが多いのです。

 ASDとはどんな疾患なのでしょうか。
・自閉症スペクトラム症(ASD)の3つの特徴

  •  対人関係と社会性に関する障害
  • 言語発達、コミュニケーションン能力発達の遅れ
  • 偏った行動や興味

特徴の現れ方は人それぞれ

 ASDという同一の診断であっても、話し言葉がうまく出てこない方や、逆に一方的に流ちょうに話すことができるけれども双方向的に言葉のキャッチボールをするのが苦手だという方まで様々です。目と目が合わない、目を合わせると背けてしまうという方もいます。日常生活での手続きなど形式的なやりとりには困難がないけれども相手の考えていることを表情や言葉のニュアンスから読み取ることができない人もいます。また一つのことへのこだわりが強いため昆虫、恐竜、電車などの乗り物など特定の分野に詳しく、博士のようだと言われることもあります。また感覚過敏を持つ方も多く、ごく小さな機械音や話声を不快に感じて耳を塞いだり、光がまぶしくて手で遮ったり、サングラスが手放せない方もいます。それらの感覚過敏は時に多くのストレスの原因となります。このようにASDと一言でいってもその程度や特徴は様々です。

 また発達の段階とともに、直面する発達課題も異なってきます。思春期以降では、集団活動を通した人間関係、進学、就労や家庭生活、余暇活動、自己実現などもテーマになってきます。当事者がその人らしく歩めるような支援を提供できるように準備し、相談に応じられるインフラとして機能することが医療や支援機関の役割です。

薬物療法
 薬物療法については、ASDの方は周囲の刺激に敏感でストレスを抱えやすく易怒的になりやすく精神安定薬や抗精神病薬などが使用されることがあります。また、併存する精神疾患に対してはその病状に応じた薬物療法が実施されます。光線過敏をはじめとした知覚過敏には抗精神病薬の一部で効果があることがわかっています。抗精神病薬も最近では副反応がかなり軽減されたものが増えているため過度な心配はしなくても大丈夫ですので主治医の先生にもよく相談すると良いでしょう。

 それでは思春期が近づくにつれてどういった問題が生じやすくなり”人間関係につまずきが生じいきづらさをかんじる”のでしょうか。学童期までは対人交流が少なく一人で遊んだり、何かに没頭していても大人しい子、変わった子といわれることはあるでしょう。学童期までは先生が生徒に関わって共同作業を行うことも多く大きな問題に発展しにくいかもしれません。ところが思春期頃になると学生自身を中心に集団での活動、チームでの共同作業をする機会が増えていきます。そうなると”意思疎通が困難で、空気をよめないといったことが目立つ”ようになり仲間から浮いたり疎外感を感じるかもしれません。もともと偏りがあり刺激に敏感なためストレスの限界をむかえると易怒的となり癇癪をおこすことも生じやすくなります。マイペースで業務に協力することの理解も得にくいかもしれません。

ASDの特徴はいいところもたくさんあります。

  •  興味や能力に偏りがあるため一つのことに没頭できる
  • みんながやりたがらないことも興味があれば突き詰めて大きな成果をだせる
  • また空気よめない特性はみんなとちがったアイデアを提案できる

 みんなが空気をよんで忖度ばかりしていれば大きな発展もなく、ひとたび間違った方向にいくとさらに間違いが大きくなることもあるかもしれません。ASDの方がいて斬新なアイデアが出ると、それをきっかけに様々な意見がみんなから出やすくなることも多いでしょう。

 ASDの方に対して空気が読めない、マルチタスクができないといったことを責めるのではなく”一つのことに集中できることをのばすといい”のです。継続は力なりというようにみんなが継続できないことをなしとげることで大きな業績をあげる方も多いでしょう。過敏でHSPな要素があるため繊細なデザイン、建築などが得意なことも多いです。できることを評価しあえば”自己肯定感にもつながり生きづらさは大きく解消する”のではないでしょうか。

 尚、ADHDとASDの症状が混在する方も多いのですが、生活に困る中心的な症状にまず焦点をあてて生活支援、カウンセリングや薬物療法を行います。

今回のブログをみていただいて思春期をむかえる生徒さんやご家族の方の不安、疑問が少しでも解消されるとうれしいです。

 ※当院では、医師による診察の上で、初回の心理カウンセリングは料金を頂いておりません。カウンセリングを”生きづらさの改善のきっかけ”にしていただいても良いかと思います。経験豊富な心理士による認知行動療法も行っております。医師の診断のもとで必要であれば当院に在籍する経験豊富な心理士によるWISC検査も実施可能です。
生徒さん、ご家族の思いに寄り添い個別の治療を提供させていただきますので深く悩まずに気軽にご相談下さい。

 

下記もご参照ください

※自閉症スペクトラム障害(ASD)
https://www.warabi-mental.com/asd/

※学童期、思春期のご本人、ご家族向け(発達障害ナビポータルサイトより)
https://hattatsu.go.jp/ddnp/person_family/child_puberty/